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【取材記事】中里郷土の森にホタルの屋外飼育施設ができました!
2025年7月25日|カテゴリー:中里郷土の森ホタルプロジェクト

練馬の夏の風物詩「ホタルの観察会」を開催している中里郷土の森。令和5年度に募集した「中里郷土の森ホタルプロジェクト」の寄付金を活用して、令和7年(2025年)3月に、ホタルの屋外飼育施設ができました。飼育状況とあわせてご紹介します!
新たな光を育む屋外飼育施設 〜ホタルの数を飛躍的に増やす挑戦〜
新しい飼育施設について、説明してくれたのは現場統括責任者の吉村翔太さん。中里郷土の森では、ホタル(ヘイケボタル)の幼虫と、幼虫の餌になる巻貝(タニシやカワニナ)を育てています。

現場統括責任者の吉村翔太さん
棚の水槽ではホタルの幼虫を、下の水路では水を循環・ろ過させながら巻貝を育てています。場所は正門を入って、右側の奥。誰でも気軽にホタルの飼育の様子を観察することができます。

ホタルの幼虫を飼育する水槽

ポンプで水を循環しながら巻貝を飼育している水路
これまでは、室内でたくさんの食器用トレーを代用して、幼虫を育ててきました。室内飼育にはどうしても、キャパシティー(収容能力)の限界があります。トレーでの飼育は、毎日水を交換する必要があり、水質の維持管理も大変な作業です。
新施設では、この課題を大幅に改善。これまでの屋内トレーと比べて、スペースが2倍近い規模になり、飼育できるホタルの数を大幅に増やすことが可能になりました。さらに、屋外の水槽は水量が多く、水の交換頻度を減らすことができるので、飼育作業の軽減につながります。
ホタルの一生と飼育スタッフの献身 〜1年を巡る命のバトン〜
ヘイケボタルは、卵から幼虫になるまで1年かかりますが、成虫として活動できる期間はわずか1週間から1か月程度と言われています。そんなホタルの短い一生を支えるため、年間を通じて地道で献身的な飼育作業を続けています。

ホタルの幼虫(上)と巻貝(下)
ホタルがパートナーを探すため光りながら求愛活動を行い、交尾を終えるとメスは産卵します。産み落とされた卵は、約2~3週間ほどで孵化し、ごく小さな幼虫が誕生します。この幼虫期がホタルの一生の中で最も長く、飼育スタッフにとって最も手間がかかる時期となります。
12月頃までは、幼虫の成長期にあたります。この間、スタッフは毎日欠かさず餌となる巻貝を与え、水の管理を行います。幼虫よりも大きい巻貝ですが、ホタルは巻貝の殻の中に顔を突っ込んで捕食するそうです。
12月頃からは、幼虫は休眠状態となって冬を超えます。完全に餌を食べなくなるわけではないため、冬の間もスタッフは定期的に餌を与え、水替えなどの管理を続けます。
そして春。4月頃になると本格的に幼虫の活動が再開し、毎日の世話も再開します。大きくなった幼虫は、5月頃から土に潜って蛹(さなぎ)になります。
蛹から羽化した成虫は、夜になると、土の中からモゾモゾと出てきて飛び回ります。成虫になったホタルは餌も食べず、水だけで過ごします。

ホタルが成虫になるまで(たまご→ようちゅう→さなぎ→せいちゅう)
「ホタルを人工で育てるための文献やノウハウが少ないんです」と吉村さんは言います。水温や水質、餌の量などすべてにおいて手探りの部分が多いのだそうです。
また、ホタルを飼育する際は、水の清潔さが重要ですが、「きれい過ぎてもダメ。貝が食べる藻が生えなくなってしまいます」と吉村さんは言い、繊細なバランスが求められるとのこと。
過去、病気(カビ)が発生し、幼虫の数が激減するなどの失敗も経験しつつ、試行錯誤を重ねてきました。それでも孵化から成虫まで、1,000匹単位で飼育しても200匹程度しか育たないのが現実です。ホタルの飼育は、スタッフの細やかな管理と愛情によって支えられています。
ホタルが示す「身近な自然」の豊かさ 〜観察会と教育活動〜
「ホタル観察会」は毎年人気があり、今年も抽選倍率は3倍以上となりました。今年の観察会では、「ホタルがなぜ特定の環境でしか生きられないのか」、「身近な自然の豊かさや大切さ」を知ってもらう目的で、ホタルの生息環境に焦点をあてた展示とミニトークが用意されました。

光を放つヘイケボタル
今後、ホタルの飼育施設が本格稼働し、より多くのホタルが育成できるようになれば、将来的にはさらに多くのホタルが夜空を舞い、観察会を訪れる人たちの目を楽しませてくれることでしょう。
吉村さんは、ホタルの飼育施設ができたことで、さらに期待を膨らませています。
「虫が苦手な人でも、ホタルに興味がある人は多いですよね。ホタルの観察をきっかけに、いろいろな生き物を観察したり、地元のみどりを好きになって帰ってもらえたらと思っています」
採って見て遊んで!練馬の虫展 〜夏休みの企画〜
「ホタルの観察会」が終わると、中里郷土の森では令和7年(2025年)7月23日から9月1日までの間、夏休みの企画展示「練馬の虫展」がスタートします(入園料・参加費無料)。
身近な昆虫に焦点を当てた展示と、実際に虫捕りを体験でき、捕まえた虫の種類に応じて「虫捕りカード」がもらえる企画が大人気です。
園内には、トンボ、カマキリ、チョウなどが300種類以上いて、カードを何百枚も集める“虫マスター”もいるそうです。この企画展もまた、ホタルの観察会と同様に、子どもたちが自然に触れ、学び、親しむための大切な機会となっています。
詳細はこちら

水生昆虫が集まるビオトープ池(葉っぴい基金を活用して設置しました)

100年以上前からある貴重な屋敷林を生かした中里郷土の森。身近な昆虫がいっぱい

虫捕り網を借りて虫を捕まえよう!

捕まえた虫の名前を図鑑などで調べてカードをゲット!
「中里郷土の森ホタルプロジェクト」とは
令和5年度に募集した「中里郷土の森ホタルプロジェクト」は、目標額の100万円を大きく超える約165万円の寄付が集まりました。この寄付金を活用し、今回のホタルの屋外飼育施設ができました。あたたかいご支援をありがとうございました。
中里郷土の森緑地
所在地:練馬区大泉町1-51-2
開園時間:9時~17時(10月~2月は9時~16時30分)
電話:03-3922-3021
休園日:毎週火曜日(祝日の場合、その直後の祝休日でない日)、年末年始(12月29日~1月3日)
中里郷土の森公式サイト