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【取材記事】牧野記念庭園の書斎の再現展示がついに完成しました!

2023年4月21日|カテゴリー:牧野記念庭園書斎再現プロジェクト

牧野記念庭園の書斎の再現展示が、令和5(2023)年4月3日に一般公開となりました。それに先立ち、「牧野記念庭園書斎再現プロジェクト」に寄付していただいた方を招待し、4月1日・2日に見学会を開催。牧野富太郎博士(以下、博士)のひ孫で学芸員の牧野一浡(かずおき)さん(以下、牧野さん)は「リアルな書斎の再現が悲願だったので、喜びもひとしおです」と挨拶しました。見学会の様子をご紹介します。

再現した書斎の見どころを寄付者に説明する牧野さん

まるで博士がそこにいるかのよう!

これまでの書斎は展示品が少なかったのですが、今回のリニューアルでは、3,200冊にもおよぶ本のレプリカや博士愛用の道具類のレプリカにより博士の晩年の様子が再現されました。植物研究に没頭している博士が、そこにいるような雰囲気を醸し出しています。

遊び心たっぷりのメッセージボード

「写真のように一瞬を切り取ったものではなく、富太郎がここでまだ研究をしているというような臨場感を感じてもらえるように再現しました」と牧野さん。

書斎に置かれたガラス張りの「活かし箱」

「活かし箱」とは、採集した植物を中に入れて、写生したり、標本を作ったりするための保存用のケース。この日は桜のレプリカが収められており、季節ごとに替えていく予定です。

「原色の海」と表現されたほどのカラフルな本

公開されているのは、博士が昭和32(1957)年に94歳で亡くなるまで、実際に使っていた書斎と書庫の一部です。博士は、ここ大泉で書斎の場所を3回ほど変えています。最初は2階にあったのですが、本の重みで玄関の障子が曲がってしまったため1階に移りました。

「当時の書斎にいる富太郎を絵に残した画家の榑松(くれまつ)正利さんは、原色でカラフルな美しい本の合間を忙しそうに歩く白髪の富太郎を見て、『原色の海を渡る白銀の蝶』と表現しました」と牧野さん。

書斎再現を担当した展示デザイナーの里見和彦さんと相談して、「本は沈んだ色ではなく、カラフルにしよう」と決めたそうです。

里見さんの手描きにより約220冊は色鮮やかに再現されました

博士の45,000冊もの蔵書を保管する高知県立牧野植物園の「牧野文庫」の協力を得て、高精細カメラで撮影し、再現したレプリカ本など書斎に収めた本の数は、約3,200冊。

博士こだわりの研究アイテム

博士が愛用したこだわりの道具も必見です。ハサミをはじめ、360度回転する電気スタンドなどは、忠実に復元しました。昭和20年代のものは生産中止となったものが多く、種子鋏(種子島のハサミ)やドイツ製の剪定鋏は、特別に復刻してもらったもの。机の上にあるパイロットの万年筆や黄色い瓶のヤマト糊は、メーカーから寄贈してもらった貴重な一品です。

「名刺箱にデパートの包装紙を貼り付けて印鑑入れにしたり、剃刀をきれいに並べたりと、富太郎は物を大切にしていました。芸がとても細かいんですよ」

原稿執筆中の机上を再現。中央にあるのが種子鋏

牧野さんも、自ら展示品を修正しました。錆びてボロボロだった電気ストーブを分解して錆止めを塗り、色を塗り直して展示。「出スベキノ手紙」と書かれた木箱に入っている手紙は、牧野文庫にあった、実際に博士が出したハガキを複製して消印を消すという凝りようです。

「出スベキノ手紙」と書かれた木箱

机の横の呼び鈴は、自転車のベルを使って再現しています。
「この呼び鈴は、茶の間とつながっていて、富太郎が用事がある時に家族を呼ぶためのもの。あまりに頻繁に呼ぶので、祖母が外してしまいましたが(笑)」

また、机の上にある双眼鏡で、ここからよく庭の木や花を観察していたそうです。

参加者からのQ&A

参加者からの質問に、牧野さんがエピソードを交えて回答しました。

Q:博士は何時ごろまで机に向かわれたのですか?
A:「夕飯が済むと、座布団の上でちょっと仮眠し、夜中の0時頃まで机に向かっていました。朝起きるのはそんなに早くありません。朝、自分でコーヒーを挽いて飲んでいた時期もあったそうです。フランスパンにバターをたっぷり塗って食べていたと、叔母から聞きました」

Q:書斎の掃除はどうしていたんですか?
A:「家族が掃除をしていましたが、物に触ると富太郎が烈火のごとく怒るので、とても大変でした。また、標本製作のための準備を家族がやっておかないと、かなり怒ったそうです」

Q:書斎の立派な額は、どなたの書ですか?
A:「富太郎が尊敬していた植物学者の伊藤圭介先生の書です。日本初の理学博士でもある方で、富太郎が先生に頼んで『繇條書屋(ようじょうしょおく=枝や草が伸び茂る書斎)』と書いてもらい、とても大切にしていました。富太郎にとっては、植物も本も知識を与えてくれるもので、書斎は庭とつながり、庭は日本の山とつながっているという考えだったようです」

Q:博士との会話で記憶にあることは?
A:「約10年一緒に暮らしましたが、富太郎が90歳を過ぎて耳が遠くなったこともあり、会話らしい記憶はほとんどありません。夕飯の時間になると、『おじいちゃん、ごはんですよ』と呼びに行きました。富太郎は92歳くらいから病で伏せていることが多かったのですが、頭の中は仕事でいっぱいでした。あと300年くらい生きたかったんじゃないかな(笑)」

参加者からのコメント

再現された書斎の外観

お披露目会の参加者は、67組122人。見学会の感想などを伺いました。

これまで何度も庭園に来たことがあるという女性は、「当時の博士が使っていたものが再現され、ここで研究していた姿が想像しやすくなりました。本の色使いにも感動しました」と心を打たれた様子。「地元のために」という想いを込めて寄付したそうです。

高知県にある牧野植物園にも行くほど、博士のファンだという女性。「机の下まで本が埋まり、当時の文房具まで再現されていて、すごい!」と感動しきり。練馬区に引っ越してきて1年ほどですが、「博士を応援したい」と寄付を決めたそうです。

4月から放送を開始したNHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルである博士。ドラマをきっかけに訪れる方も多いそう。再現された書斎を見れば、博士をもっと身近に感じることができるのではないでしょうか。

コメントをくださった寄付者の方

練馬のみどりを未来へ 「牧野記念庭園プロジェクト」の寄付を募集してます

練馬みどりの葉っぴい基金の「牧野記念庭園書斎再現プロジェクト」は令和5年2月28日で寄付募集が終了となり、目標額の500万円を上回る約520万円が集まりました。

4月以降は「牧野記念庭園プロジェクト」として、庭園の植生の保全や博士の功績を伝える展示設備の充実にあてる寄付金を募集しています。引き続き、ご支援をお願いします。

庭園に置かれたフォトスポット。NHK連続テレビ小説「らんまん」の影響もあり、区外からの来場者も増えています!

練馬の春は「牧野」推し! 大泉学園駅南口のデッキにも看板が!
 
現在寄付募集している練馬みどりの葉っぴい基金について、詳しくはこちらをご覧ください。

牧野記念庭園
所在地:東京都練馬区東大泉6-34-4
開園時間:9時~17時
休園日:火曜(祝日は開園、次の平日が休園)、年末年始
練馬区立牧野記念庭園公式サイト

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